抜け殻エッセイ「そこまでは、覚えている。」【第三夜】帰れない夜

抜け殻エッセイ「そこまでは、覚えている。」【第三夜】帰れない夜
今日は飲みすぎないようにと家人に強く念を押されたが、案の定飲み過ぎてしまい、せめて早く帰ろうと21時あたりに地下鉄駅に着いた。東西線大通駅。間もなく到着した電車の椅子にどかりと腰を下ろす。行き先は大谷地。マイホームタウン。大通から7つの駅をやり過ごせば到着だ。寝なければ。20分後には到着する。寝なければ。そこまでは覚えている。
そこから終点の新さっぽろ駅で目を覚まし、ヤベエヤベエと折り返しの電車に乗るも、なぜか最初の大通駅で目を覚まし、おいおい大丈夫かよオレと己を叱咤し、目をくわっと見開き、今度こそ今度こそは今度こそはと再び大谷地駅を目指すも、あろうことか全く正反対側の終点の宮の沢駅で目を覚まし、トホホホホホホホホと落胆し脱力し、心底自分が嫌になるも、さすがに冷めてきたので今度は大丈夫と己を信じ、さらの家人に「今、地下鉄に乗ったよ」という明るめのLINEを送信し、背水の陣、土俵際、絶体絶命の境地で地下鉄に乗り込んだのに、再びおなじみの宮の沢駅で目を覚まし、表示板の「最終電車は当駅を出発しました」という無情な一文を目にしたときの、地球なくなっちまえ感。
── 帰れない夜も、飲みすぎた自分も、きっとどこかで笑い話になる。
再掲元:note「抜け殻エッセイ『そこまでは、覚えている。』【第三夜】帰れない夜」
テキスト:有限会社シーズ Y / ヘッダーイラスト:有限会社シーズ W